船橋で織りなす日本語模様3 【八千代橋】「魚」は、うお? さかな?
海老川が敷地内を流れる「船橋市地方卸売市場」は、BTS言語学院から歩いて数分のところにあります。本学院の所在地は船橋市市場4-12-13。近くには通称「市場通り」が走っています。
「市場」は訓読みでは「いちば」、音読みでは「しじょう」です。
住所や道路の「市場」は「いちば」と読み、「卸売市場」は「おろしうりしじょう」です。NHKによると、「原則として『イチバ』は『場所』、『シジョー』は『経済的な機能』を表す」そうです。(https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/082.html)
確かに、住所は場所で、卸売市場は経済的な機能です。
卸売市場は、青果と水産物に分けられています。青果は野菜や果物、水産物は魚介類です。
新鮮な旬の食材が豊富で、食堂もあり、船橋の台所となっています。
海老川を上流に向かって船橋橋の次にある橋は八千代橋(やちよはし)です。
八千代橋は「漁業・豊漁」をイメージしていて、欄干には、波の上を泳ぐ大魚のレリーフが設置されています。
大隈秀夫著『分かりやすい日本語の書き方』(講談社現代新書)に、次のような魚にまつわるエピソードが紹介されています。
関東の老人が墨田川に浮かぶ魚影を指さし、「さかなが泳いでいるだろ。」と言ったところ、関西の老人が言い返す場面です。
「さかなじゃなく、うおだろ。さかなというのは酒を飲むとき、食膳に載せられたものを言うんだ。(略)」
関東のお年寄りが答えた。
「なんでもかんでもさかなと言ってるんじゃないよ。関東でも例外があるんだ。仲買い人が集まって競り売りしている市場のことはちゃんと“うお市場“って呼んでるんだから……」
大隈秀夫『分かりやすい日本語の書き方』
実際、戦後において日本政府は、「魚」という漢字の読み方を定めた際、音読みは「ギョ」、訓読みは「うお」しか認めていませんでした(1948年、内閣告示の当用漢字音訓表)。「魚」に「さかな」という訓読みが認められたのは、今から50年前のことです(1973年に改訂された当用漢字音訓表)。
現行の常用漢字表にも、もちろん「さかな」の訓読みが掲載されています。
酒席のおかず「酒菜」が由来
酒の「さかな」というのは、「酒」と「菜」の複合語からできています。「菜」は副食物、すなわち、おかずです。「さけ」と「な」で「さかな」と読むのは、以前言及した転音(母音交替)の例です。
江戸時代になって、「魚(うお)」が「酒菜(さかな)」として酒席に多く出されるようになり、「うお」と呼ばれていた「魚」という漢字が「さかな」とも呼ばれれるようになったのです。
「肴」(さかな)という漢字を使うこともあります。
「水を得た魚のように」とは、得意の分野を見つけたり、与えられたりして、思う存分活躍する様子を表しています。中国の『三国志』に出てくる劉備玄徳と諸葛孔明の交わりが由来です。
この慣用句の「魚」も伝統的に「うお」と読んでいましたが、最近は「さかな」と読む場合も多いようです。
船橋市の「総合教育センタープラネタリウム館」(千葉県船橋市東町834。現在、休館中。2024年7月ごろ再開予定)では、夜空の星々を観察することができます。「今夜の星空生解説」も好評です。二度と再び見ることができない、その日の星空を解説付きで堪能してはいかがでしょうか。冬空に見える「魚座」は、言うまでもなく「うお座」です。