船橋でりなす日本語模様もよう11【富士見橋】 どっちを優先? 当て字の読みと意味

  • 2024年05月20日

BTS言語学院はJR船橋駅の隣、東船橋駅が最寄(もよ)り駅で、歩いて約8分です。

船橋警察署がすぐ近くにあり治安もよく、安心して生活できる地域です。

また、市立高校、県立高校も近くにある文教地域です。

留学生にとって、暮らし、学びの両面で最適です。

ふなばし三番瀬海浜公園(千葉県船橋市潮見町40番)からは雄大な富士山が見えます。かつては海老川の富士見橋からも、霊峰を望めたのでしょうか。

富士見橋には4つの女性像が立ち、四季を表すと言われています。この橋のテーマは「芸術」です。

静岡県の世界遺産富士山公式webサイト「世界遺産 富士山とことんガイド」には、富士山は「芸術の源泉」であるとして、次のような記述が掲載されています。

富士山の存在は、芸術の分野から世界に知られることになりました。万葉の時代から現代に到るまで、日本人は、その時々の気持ちを富士山に託し、多くの歌を詠(よ)み、描いてきました。

日本の文化や芸術を遡(さかのぼ)っていくと、雄大な富士山にたどり着きます。

「世界遺産 富士山とことんガイド」からhttps://www.fujisan223.com/reason/arts/

「ふじ」という言葉は、漢字が伝わる以前から呼ばれていた名称です。それに「富士」山という漢字を当てました。「不二」山、「不死」山、「不時」山、「不尽」山などの表現もあります。

 富士山

 不二山

 不死山

 不時山

 不尽山

いわゆる当て字です。当て字は、当座の字を転用するということで、漢字の本来の用法を無視して創作された言葉のことです。

「海老(えび)」も「最寄(もよ)り駅8分」の「最寄り」も当て字です。

当て字には2つのタイプがあります。

A 亜米利加(アメリカ) 巴里(パリ) 滅茶苦茶(めちゃくちゃ)

B 昨日(きのう) 今日(きょう) 明日(あす) 田舎(いなか) 大和(やまと) 海老(えび)

Aタイプは、漢字の用法のうち、意味を無視して読み方を優先した当て字です。

アメリカのことを「米」と略すことがありますが、植物の「こめ」とはまったく関係ありません。滅茶苦茶(めちゃくちゃ)も、「減る」「苦しい」というマイナスイメージの意味を持つ漢字を当てていますが、「お茶」とは無関係です。

Bタイプは、漢字の用法のうち、読み方を無視して意味を優先した手法です。

「田舎」を「い」と「なか」に分けるのか、「いな」と「か」なのか、議論しても仕方がありません。「田舎」はこの2つの漢字で「いなか」なのですから。このタイプを「熟字訓」と言います。

では、「最寄り」はAタイプなのか、Bタイプなのか。無理やり読めば「も(っとも)」「より」でAタイプかと思えるし、最も寄っているという意味からするとBタイプかとも思えます。正解は、Bの熟字訓に分類されているようです。

「最」を「も」と読んでいるように思える当て字は、ほかに「最早」(もはや)「最中」(もなか)などがあります。

 

「最中」は「もなか」「さいちゅう」「さなか」

「最中」と書くと、「もなか」以外に「さいちゅう」「さなか」という読みもあります。

今、冬の最中で、最中を食べている最中です。

上記のような文だと訳が分からなくなってしまいます。

下記のように言い換えれば意味が分かります。

今、冬の真っ只中で、モナカを食べているところです。

「もなか」は和菓子です。名称は満月を意味する「最中(もなか)の月」に由来します。

源順(みなもとのしたごう)の次の和歌が起源とされています。

池の面(も)に 照る月なみを 数ふれば 今宵(こよい)ぞ秋の 最中(もなか)なりける

【池の水面に映る月が波打っている。その月を見ながら月日を数えてみれば、今夜は秋の真ん中の満月(最中)、中秋の名月であった。それで、こんなにも見事な月なのか。】

東京・江東区の亀戸天神前に「船橋屋」という発酵和菓子の老舗(しにせ)があります。船橋出身の創業者が1805年に開業し、本店の暖簾(のれん)には「元祖くず餅」の文字が染められています。芥川龍之介や永井荷風、吉川英治ら文豪も訪れた歴史ある名店です。

この店に「最中日和」(もなかびより)という商品があります。

船橋駅前の百貨店にも店舗があります。

和歌にある「今宵」も、船橋屋に関連する言葉である「老舗」「暖簾」「日和」も、当て字です。

今宵(こよい)

老舗(しにせ)

暖簾(のれん)

日和(ひより)

日本語はなんと当て字にあふれていることか。